版画工房 WERK-STATT N組の活動


工房独自のオリジナル版画共同制作、工房独自の版画用再生紙の製作
ワークショップ:子ども〜大人対象のコラグラフ・モノタイプ版画、銅版画、紙漉きなど
展覧会:国内、海外での版画工房WERK-STATT N組版画の展覧会、児童絵画展などの企画展
レクチャー:版画分野を超えた幅広いテーマのレクチャーを開催、人との交流活性化
出前授業及び出前ワークショップ:小学校、幼稚園、文化施設などの他、幅広い分野

今年2回目の紙漉き再開

August 25, 2025









先日の雨の中の紙漉から丁度1週間目に再び、紙漉きを再開しました。大切な
楮繊維やミキサーで細かく砕いた段ボールのパルプが沢山残っていたからです。
日中の38℃近くまで上がる気温では体力の消耗が激しいです。暑い昼間の時間
帯は避け、涼しい早朝とアトリエの建物で庭に日陰ができる午後から夕方の2回
に分けて作業を進めました。それでも日陰とはいえ蒸し返る暑さです。

1日目に漉いた紙を次の日にも再度天日干しするため、重い乾燥板を二人で運ん
でいる途中、後の私の片手でパチリと撮影した写真に庭の竹の影が綺麗に写り
んでくれました。思わぬ偶然に気持ちが和らぐ瞬間です。
真剣モードのハードな紙漉作業の間に、ひょっこりと水場に現れる訪問者はトン
ボやカエル、チョウチョなどの虫たち。庭の住人たちが代わる代わるやってきて
とても嬉しかったです。昆虫達もこの暑い夏は突然現れた水場や日陰を好むよう
です。天日干しの紙の上には紙を汚すことなく、ひっそりとスイッチョンでしょ
うか?乾燥段階では大きく波打っていますが、乾いた紙は最後に銅版画プレス機
で強い圧力をかけ、綺麗に平に仕上げます。紙漉は多くの作業がつきものです。
今年の夏は酷暑でしたが、一気に紙を乾かしてくれる太陽の恵みには感謝です。
こうして今後に使うN組手漉き版画用紙もでき、ほっとしたところです。
これからの新作版画制作も楽しみです。



雨の中の紙漉き

August 13, 2025


本来は天気の良い8月初旬の夏ですが、今年の8月9日からの数日間は連日の雨
でした。雨の中での紙漉は初めてです。初日は幸い雨が降らなかったので、例
年通り工房の庭で作業ができました。2日目は早朝よりあいにくの雨でしたの
で、急遽屋根下のデッキの上で紙漉作業を行いました。強風で吹き込んでくる
雨に注意しながらスケタを置く場所を慎重に確保です。漉き上がった紙はすぐ
に天日干しができないので、デッキ内にある長椅子や角材を利用し、先ずはス
ケタを傾けて、漉いた紙に含まれる多くの水分を落とすことが重要でした。

今回も丹後二俣和紙さんから楮の繊維をご提供いただいています。ありがとう
ございました。先日大江町にある紙工房に伺った時、今年は天候不順で雨が少
なく楮の木の成長が遅れていること、また栽培されている楮の木の新芽を鹿が
食べてしまう被害が出ているお話をお聞きしました。一枚の和紙が生まれるま
には、目には見えない大変な作業があります。

私たちの版画工房N組の版画紙を漉く上で大切な工程は、楮紙をのせる土台に
使用しているダンボールを酸性から中性に調整することです。小さくカット済
のダンボールが浸してあるバット内に、アルカリ性の重曹を入れて、何度も水
を交換し、ダンボールに含まる灰汁や汚れなどを洗い流すことが重要で、でき
るだけ中性紙にしてからミキサーの作業に入ります。今回漉いた紙は雨があた
らないように、一時的にサンルームに避難させました。天気が回復次第、天日
干しで一気に乾燥させる予定です。また、天気が回復次第また数日間は紙漉作
業を再開いたします。

















N組工房周辺の住人たち 31

July 11, 2025







小さなアナグマの訪問(20257月2日午後1.30時頃の日中)

近頃、版画工房横にある庭に多くの動物達が頻繁に現れます。私たちの仕事場
は村の一番奥まった所にあり、周りは小川や森や田畑ばかりです。自然の中の
一軒家ですので、動物たちが訪れるのも当然かも知れません。
今年3月に植え替えた大きな鉢の蓮の花が咲き出したばかりの近くに、その姿
が現れました。庭の土に鼻を頻繁につけ、ミミズかなにかを食べているようで
す。近くにいる私たちには目もくれず、その辺をウロウロしているのです。
まったく恐れを知らない小さなアナグマです。今年生まれた子どもの一匹でし
うか、近くの森の巣穴から出て来た感じです。

私たちも静かに観察をしているのですが、時々こちらを見るだけで逃げ隠れも
せず、庭の昆虫などを食べるのに精一杯のようです。近くに行っても時々こち
らを見るだけで、なかなか逃げません。おかげでかわいい目をした顔もアップ
で撮影出来ました。鼻の穴すら見せてくれたのです。私たちも仕事が忙しいの
で、アナグマはそのまま放っておきました。後で森の巣穴に戻って仲間たちに
報告するのでしょうか?あそこに住む人間達は間抜けで危険ではなく、庭には
美味しい食糧がたくさんあるから、また皆で行こうと伝えているかも知れませ
ん。またぞろぞろとアナグマ達が現れたら、愉快ですね。悪さはしないでね!



バルビゾン村

June 24, 2025





ここ数年バルビゾン村(フランス パリの南東部約50kmにある芸
術村)と兵庫県、朝来市との芸術文化交流が再開しています。
実は2023年秋、朝来市の高校生が文化交流した際に市からのお土
産としてN組版画を持っていかれました。その後、気になっており
ましたが、今年5月にバルビゾン村で一週間滞在制作してきた朝来
市在住のアーティスト大森梨紗子さんがこの写真を撮って送ってく
れました。村の庁舎にあるそうです。19世紀のバルビゾン派の画
たちを魅了した村ですのでN組も一度訪ねる機会があればいいと
ます。



N組工房周辺の住人たち 30

May 30, 2025







カマキリの子どもたちを発見(2025528日午後3時頃 晴れ)

仕事の合間に工房周辺の畑や庭を見て回るのが私たちの習慣にな
っています。四季を通じて家の周りの自然観察には心が休まりま
す。版画工房のガラスサッシの扉の外にはオリーブの木の鉢があ
ります。冬場は工房内の日のあたる所に入れて冬越しです。但馬
地方の冬の寒さから守るためです。年によって春にはオリーブの
花芽も見かけますので観察していると、不思議な明るい黄色の塊
が枝からぶら下がり、風に揺られながら動いているではありませ
んか。よく見ると小さなカマキリの子ども達です。何十匹もそ
塊で下を向いて動いているのです。小さな体には黒い2つの目も
見えます。昨年の秋に産みつけられたカマキリのたまごの殻の中
から蜘蛛の糸の様なものの先に塊になって下がっているのです。
その塊から元気のいいカマキリが順番に上に向き他のカマキリ達
の上をオリーブの枝に向かってどんどん登ってゆきます。それも
凄い早さなのです。黄色の塊が少しずつ小さくなってゆき、上に
ある葉っぱには鈴なりのカマキリの子ども達で一杯になります。
数時間はあちこちの葉っぱの表や裏に固まっておりますが、その
後は他の場所に散って行き、次の日にはあの小さなカマキリ達は
総てオリーブの木から消えていました。これからはあの小さな体
で工房周辺の見えない所で虫を捕食しながら成長して行くのです。
はたしてこの厳しい環境の中で何匹が生き延びて親になるのか楽
しみです。夏場には工房周辺の住人として綺麗な緑色の親カマキ
リを見ることができるでしょう。



N組工房周辺の住人たち 29

May 28, 2025







山椒の実に隠れて生きる

森や田んぼに囲まれた小さな村にある工房周辺の新緑もますます深まって来ま
した。周りの水田もすでに田植が終わり、今年も水で満たされた美しい棚田の
風景が現れました。私達の好きな季節です。畑の隅に育つ朝倉山椒の実の収穫
期になりました。仕事に追われて収穫を忘れていたのですが、昨日車で隣の町
のパン屋さんに出かけた道沿いの畑で、収穫をしているおばさんを見かけたの
です。長年通っているパン屋のおばさんには収穫したてのワラビのプレゼント
を頂きすっかり旬の食材に感激です。
今年も我が家の山椒の実も沢山育ちました。隣町の八鹿の朝倉山椒はブランド
商品として有名ですが、家の山椒の木はあまり大きくないので、籠をもって木
の周りを動けば緑の実は素手で収穫できます。手間はかかりますが、美味しい
自家製の佃煮や山椒味噌が楽しみです。
収穫を終えて、山椒の実を籠に山盛りにして眺めていると、何と沢山の緑の実
の中に小さな四つ目の丸顔姿が動いているではありませんか。数匹います。
よく見ると蜘蛛で、足や頭は緑ですが丸い体は薄い黄色です。この丸い体に目
のような模様がついているのです。擬態の典型ですので早速写真でパチリ。
何と云う名前の蜘蛛か知りませんが、香りの良い山椒の木に集まる虫を餌にし
ているようです。工房周辺には、普段は目につかないこのような小さな住人た
ちが沢山いるようです。これからも周りの自然観察を怠らずに制作を続けます。



N組工房周辺の住人たち 28

May 03, 2025





庭に鹿が現れる

また1年が過ぎてしまいました。工房周辺の山々や森は新緑の木々で覆われ、
この時期の柔らかな美しい緑の色彩は日本独特です。今年の庭の桜も満開にな
り皆とデッキで白ワインを飲みながらの花見もできました。すでに桜も散り新
緑の4月28日の早朝に何年ぶりかで、庭に雌鹿が現れました。
日頃の忙しさに追われ、長らくこの覧の記事の掲載をさぼってしまいました。
姫路の内藤絹子展も無事終わりましたが、早起きはいつもの時間帯です。朝7
時頃、新緑の庭を眺めると三つ葉ツツジのあたりで、鹿がこちらを見ているで
はありませんか。その辺を歩き回っている間に部屋のカメラを持ち出しパチリ
と撮影に成功でした。ピンボケですが目が光っています。いつもは山の奥で声
は聞くのですがなかなか姿は見せてくれません。鹿達の行動心理は分かりませ
んが、なぜ今頃村に現れたのか分かりません。この季節は食糧には問題がない
はずです。鹿が去った後すぐに畑に行きましたが、植えたばかりの夏野菜には
被害がありませんでした。工房の庭を鹿が歩き回るのは嬉しくて感動的です。
戦争やいやな事ばかりが増えている現在の世の中ですが、私たちの生活圏に野
生の動物達が歩き回るのは歓迎です。でも人に危害を加える腹の空いた熊はご
免です。人間達にも責任があるはずです。例えば温暖化のせいで山が荒れ、彼
らの食糧不足もあることでしょう。人類と野生の動物達が安全に共存出来る世
界が戻れば良いです。昔の村人は里山などを良く管理して、人と動物達の生活
圏を理解していた様な気がします。工房で作業中の私たちを静かに覗いてくれ
る動物達が現れれば嬉しいな〜あ!



内藤絹子展のお知らせ

April 01, 2025


姫路のギャラリー ルネッサンス・スクエアで内藤絹子展が4月12日から始まります。毎年12月のチャリティ展にN組版画を出品しているギャラリーです。
お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りくださいませ。


「ことばの森 内藤絹子展」
4月12日(土)〜27日(日)
午前10時〜午後5時 (最終日午後4時まで) 水曜休館

【会場】
ギャラリー ルネッサンス・スクエア
〒670-0940 姫路市三左衛門堀西の町205-2
(株) パナホーム兵庫1F
TEL.079-224-8772
Eメール:r-s@hyogo.panahome.co.jp






何年振りかの大雪

March 01, 2025


再び寒波が日本列島にやってきました。但馬地方にあるN組
工房も厚い雪で真っ白になりました。工房横の市道は除雪車
が来てくれるのですが、敷地内は自分たちで雪掻きをしなく
てはいけません。そこで手持ちのスノーダンプやスコップが
登場です。これでやっと車の出入りできます。雪かきで時間
が取られますが、休憩時に温かいお茶を飲むのは最高の時間
です。これで今シーズンの雪はもう御免ですね(笑)








2025年!はじまり、はじまり。

February 01, 2025


新年2025年がスタートしました。
皆さまお元気でお過ごしでしょうか?外はとっても寒いので
すが、工房横には蠟梅が咲きいい香りがしています。
工房の小さな秘密をここでご紹介します。工房のインク棚に
「インクの塔」と呼んでいるものがあります。版画の刷りで
残ってしまったインクは使えませんので、この「インクの
塔」に毎回塗布します。捨てるのはもったいない。
長年堆積してきたので奇妙なオブジェになりました(写真)。
先日、今年初めてのN組版画を刷りました。
「今月の版画 2月」にテキストとともに掲載しますのでHPの
infoをどうぞご覧ください。昨年より版画インクが値上がり
しています。大事に使わないといけませんね。






「新・童美展2024」審査会参加と展覧会のご案内

December 22, 2024


兵庫県立美術館で新・童美展2024が3日間[12/21(土).22(日).24(火)※23(月)
は休館日]開催中です。審査会で選ばれた0〜5才までの園児たちの作品が展示
されています。

「新・童美展」は58回開催の歴史ある「童美展」の理念を継承した作品公募展
です。1950年〜2008年まで芦屋市で開催された「童美展(児童創作美術展)」
は自由で感性豊かな表現・型破りな創作を積極的に評価する独創的な展覧会と
して知られていました。子どもが本来的に持つ自由で逞しい創造力をありのま
まに評価し、子ども達のほとばしるエネルギーを丸ごと受け止める場として、
「童美展」の理念を継ぎ、2017年より「新・童美展」が開催されております。

審査会では関西(奈良、舞鶴、大阪、姫路)を中心とした幼稚園から出品された
数千点以上の作品が美術館の床一面に並べられ、審査が行われました。
作品には、毛糸やペットボトル、段ボールやトイレットペーパーの芯、バケツ
の蓋、傘などといった私たちの身近にあるものも取り入れられており、子ども
たちの自由で斬新な発想に溢れています。またタイトル(おはなし)が各々付け
られ、豊かな創造力に触れることができます。子どもの力もさることながら各
園の先生方のご尽力があってこそと感じます。
今年も審査員として長岡先生、内藤先生が参加し、展覧会会場撮影・ポスター
チラシ製作を中村が担当致しました。審査会で撮影させて頂いたユニークな作
品の一部をご紹介致します。子どもたちの熱いエネルギーが込められた展覧会
をぜひご覧ください。


















蓮の葉帽子

November 01, 2024





真夏の紙漉きを見守ってくれた庭の蓮。
ピンク色の開花の美しさ。香りもそれは特別でした。

あの緑の葉っぱも今はすっかり萎れて茶色になってしまい
ました。10月になると休眠期に入ったようです
久しぶりのN組版画制作のあい間 デッキでひと時の日向
ぼっこ。遊び心でひらめきました!
蓮の葉っぱを切りとり冠ってしまいました。
この新しい帽子はいかがでしょうか?大笑い?

11月は寒暖差が激しいので、身体にはお互い気を付けて
過ごしましょう。
版画インクが固まる時期でインクの暖房も必要です。
またどこかでN組版画と共にお目にかかれますように…。










蓮の甘い香りと共に2年ぶりの紙漉き

August 14, 2024





今年もN組工房の庭で育てている蓮にたくさんの花が咲きました。
事情があり昨年の8月の紙漉き作業は行ないませんでした。梅雨が明け、台風が
北上していましたが、この5日間N組自家製の再生紙作りをしました。台風の影
響ため雲の流れが早く、時々にわか雨が降り、天日干しには常に注意が必要でし
た。天気が良いと一度に乾燥できますが、今年は雨を警戒しながらの作業でした。

漉く前の事前準備として、再生紙の土台に使用する段ボールの処理に時間がかか
ります。アルカリ性の重曹を入れ、小さくカット済の段ボールが浸してあるバッ
ト内の水を何度も入れ替えます。pH値が中性になるように調整します。
また繊維に塊が出来ないように数段階に分けてミキサーにかけます。
天日干しの段階に行くまでも様々な工夫があります。例えば乾燥が早くできるよ
うにスケタとスケタの足部分の間に角材を挟み、水抜きを行なったり、庭の山萩
の葉っぱや花が風に飛ばされて紙の上に落ちないような場所決めも大事です。
それでもせっかく漉いた紙の上に葉っぱが落ちてピンセットで除去することも多
かったです。

日中の夏の日差しは紙の乾燥に最適ですが、作業するには高温のため体力の消耗
が激しいです。早朝5時から準備を始め、お昼前には午前中の作業を終えます。
合間には熱中症にならないようにN組の庭で育っているビワの葉、柿の葉、桑の
葉、ドクダミやヨモギなどをブレンドしたお茶で水分補給。お昼には畑で採れた
茄子やピーマンの煮浸し、紫蘇ミョウガ生姜をたっぷり載せた素麺をいただき体
の熱が収まります。自然の野草に感謝です。日中は休み、15時頃から再び作業再
開です。1日約12時間もの長い作業でした。


最後になりましたが、今回も丹後二俣和紙さんの特製の楮繊維をご提供頂きまし
た。また丹後二俣和紙の田中さんからの差し入れの葛アイスキャンディにも感謝
す。有難うございました。






新しい版画

May 29, 2024


ご存知のようにN組版画はコラグラフ技法を用いた版画ですが、今回の版画は
モノタイプ技法も取り入れました。主なイメージは母体(マトリックス)から
気体のようなものが放出される瞬間のイメージです。「母体」「耳」「吐息」
「矢印」「稲妻」「渦巻」「卵」「わっしゃー」…。このように版のパーツを
スタッフ一同呼び合いながら阿吽の呼吸で作業分担し出来上がります。お互い
職人になったような気分も感じます。これからタイトルを考えます。






5月のビオトープ

May 29, 2024


畑の隅にあるビオトープにモリアオガエルの産卵が始まっています。523
夜中に室内にも差し込む明るい満月でした。その光は様々な新たな生命の誕
生を歓迎しているようでした。朝6時ごろ見にいくと予想していた通り、ビオ
トープの横に植えた野生の桑の枝に4玉ほど卵の泡が下がっていました。毎年、
何度見ても感動します。卵からたくさん生まれる命がどれだけ生き残るかわか
りませんが、生き延びてほしいと願います。

写真の左は産卵を終え泡から離れる雌を偶然にとらえた。